英語多読と従来の洋書読みとの違いについて

英語多読と従来の洋書読みとの違いについて

 実は、英語多読が話題になりはじめたのは、大体20年くらい前であり比較的新しい方法です。英語多読が一般的になる前から、洋書に挑戦し読めるようになる人は存在していました。では、英語多読と洋書を読むという行為は、何が違うのでしょうか?
 一般的に英語多読は多読三原則に基づき、辞書を引かず、わからないところはとばし、合わない本は読むのをやめるという基本方針に沿って読書が進められます。文法学習や単語帳などの負担の大きい勉強はしないと考えられています。英文も、極力知らない単語のない簡単な文章のものを選んで読むとされています。一方、洋書読みの方は、積極的に辞書引きをし、洋書にマーキングをしたり自作のノートを作ったりすることによって、文法を学んだり、自作の単語帳(今はAnkiが主流)を作って単語暗記をしたりします(というか、基本的に何でもありルールなので、実践者ごとにあらゆる工夫をします。)。英語多読と従来の洋書読みの間で一番違いが際立っているのは『英語多読は辞書の使用を禁止している』ということではないでしょうか?
 実は英語多読は中~上級者には辞書(英英辞典を推奨)の使用を禁止しておらず、また、ネイティブの作成した文法書(Grammar in Use等)での文法学習も禁止していません。また、英語圏の書籍を探索していると、ネイティブが自分たちが使うために考案したビジネス用語や専門用語などを覚えるための単語帳的な書籍にも行きつくことになります。ほら!だんだん、従来の洋書読みとの境界はあいまいになってきましたよね?英語多読もステージが進むと、従来の洋書読みとの境界があいまいになってきます。実際、洋書も子供向けの物を読んでいる間はまだいいのですが、対象年齢層が上がってくると、どうしても文脈だけでは正確な意味が推測できないために、辞書の使用が必要になってきます。
 英語多読と従来の洋書読みの違いで明確にしておくべき点をあげます。従来の洋書読みは初心者には非常に負担が高く、脱落率の高い方法だったと考えられます。実際、中古本を買うと、最初の10ページくらいにだけ分からなかったと思われる単語に蛍光ペンで線が引かれている本が良くありました。英語多読は挫折しにくいように、従来の文法主体の知識体系に依存しないで、初心者がいきなり洋書を読む経験値を集めていく事に特化した方法だと考えています。英語多読の初心者が脱落していく予兆となるのは、簡単な書籍を読まずに辞書を片手に難解な本に挑戦して読破にこだわったり、文法書や単語帳での学習に切り替えて自分を追い込んでいったりが非常に多いという実情があります。それらの方法でも洋書を読めるようになりますが、『簡単な英文を!辞書を使わないで!』強調することで、従来の洋書読みより多くの人々が読書を続けられるのではないでしょうか?
 私は辞書を頻繁に引きながら洋書を読むときには、英語多読という言葉を使わず、『洋書読み』と言葉を分けてしまいます。実際、私は電子辞書が1つ壊れるほど洋書を読むために辞書を引いてきました。TOEIC学習を捨て、何年も洋書を読むことに全精力を注入しましたが、それでも分からない単語はいっぱい出てきます。高度な内容になるほど、辞書に頼ることは必要だと思っています。
 『英語多読』という言葉を聞くと、『とにかくたくさんの洋書を読むこと』というイメージが湧くと思います。しかし、実際の『英語多読』とよばれる方法は、初学者が洋書を読めるようになることに対して特化した手法です。だから、既に洋書を読めるレベルの人が『辞書を使ったらダメなのか?』と疑問を持つ場合には目標のズレが生じているのではないでしょうか?『初学者が英文に慣れるために英文を読む』のと、『ボキャブラリーを増やすために、より高度な情報を求めるために英文を読む』では、目的も効果も違いますよね?

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