スランプによるモチベーションの低下とは、いったいどんな状態でしょうか？
好奇心・成長意欲・達成感・感情体験は、気分をポジティブな状態に持っていく作用があります。一方、不安、不快感、自己懲罰は、気分をネガティブな方へ持っていく作用があります。一般的に英語多読におけるスランプの状態は、ポジティブな要素より、ネガティブな要素の方が大きくなり、感情の負債がたまった状態であると考えられます。
もう少し詳しく考えてみましょう。人の行動の動機には、内発的動機と外発的動機があります。内発的動機は、『大人向け洋書を読めたらかっこいい！、とにかく本を読みたい！、物語に没頭するのが楽しい！（理由はないけど楽しい！みたいなもの）』といった、自分の内側からくる動機です。内発的動機はモチベーションを高めて、目標に向かう楽しさを与えてくれます。
一方、外発的動機は『YLを1上げるには〇〇万語読まないとだめらしい。洋書を読めてるあの人は、毎日２時間読んでいるらしい。心地よいレベルの本だけじゃなくて、上のレベルに挑戦しないとダメかも？（宿題の量、現実的な都合による時間制限、他の人と自分を比べた場合のあせり）』といった外部からの情報入力に基づいた行動の動機です。外発的動機は現実的な判断力を得て目標を設定する指標にはなりますが、現実とのずれが激しいと、モチベーションをすり減らす原因になってしまいます。
大体の場合、スランプは、試験や高すぎるレベル設定のプレッシャーによっていつのまにか内発的動機が失われ、外発的動機が大きく膨らみすぎてしまった場合に起きると考えています。例えば、初心者の方に一番多いのが、『難しい本が読めた！』という達成感にのみ内発的動機が支えられているパターンです。内発的動機がこれだけだと、より強い達成感を得るためにより高いYLに挑戦しますが、そこではすらすら読めず、理解度も低く、知らない単語も多いため、成長できるか不安になり、快適に読めないため不快感を感じ、これではダメだと自分を罰するようになり、ネガティブの負債がたまってしまうというパターンです。こういう方は、成長を急がず、本の内容を楽しみ、時間にノルマを設けず読むのが脱出のカギになると思います。
厄介なことに不安や自己懲罰感が大きすぎると、英語多読以外の部分にも影響を及ぼしてきます。 Tanith CareyのFeeling 'Blah'?にはアンヘドニアという、楽しみを感じられない状態についての記述があります。
アンヘドニアは『快感消失』といわれる状態で、今まで楽しめていたものに楽しみが見いだせなくなる状態をさす言葉です。 この状態になると英語多読が楽しめないだけでなく、ご飯も、テレビも、散歩も楽しくなくなります。 この状態は、①将来に期待しなくなる、②楽しかった記憶、印象が残らなくなるの二つの要因によって引き起こされます。 例を挙げると、正常な人は、ピザのデリバリーを注文したら、ピザが届く前からドーパミンが分泌されて楽しくなってきます。でも、アンヘドニアの状態の人はまったく期待しないため、そもそもピザを注文しようとも思わなくなります。また、ピザが届いて食べて美味しかったら、正常な人はまた食べたくなるのですが、アンヘドニアの状態の人は、楽しいと感じられない、楽しい記憶が残らないことによって、ピザを再び頼む意欲がなくなってしまいます。
アンヘドニアの原因は不安です。アンヘドニアの状態から脱出するためには、子供のころに楽しかった記憶を思い出して自分の内発的動機を考え、自分の不安の原因を時間をかけて特定していくことで脱出する糸口が見えるようになります。 私も、ご飯をおなかいっぱいまで食べると、しばらく英語多読ができなくなることで、自分を責め（自己懲罰感）、もっと読めるはずという強迫観念（不安）に押さえつけられていた期間があります。でも、できない英語多読のことを考えるより、ご飯がおいしかったことをよく思い出して満足し、自分が楽しんでいる今を大切にすることで、モチベーションが帰ってきました。
モチベーションの低下には、行動活性化という分野も有効らしいです。行動活性化は認知行動療法という、考え方を修正することで心の負担を小さくする精神療法の派生型です。行動活性化では、不安や自己懲罰を小さくする考え方の模範解答を積極的に学ぶことで、ストレスを軽減するという方法です。不安や自己懲罰に結び付く思考パターンを自分で見つけ出したうえで、同じことを他の英語多読仲間はどう頭の中で処理しているか聞いてみるといいのではないでしょうか？
大変長い記事になってしまいました。私も、スランプで悩んだ時期があるので、相談相手がいない人は、LINEやメールフォームで私にお問い合わせいただければ、お役に立てるかもしれないので、よろしくお願いします。
休むことに罪悪感を感じてませんか？！
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