英語多読のスランプ(燃えつき)との付き合い方

28.英語多読のスランプ(燃えつき)との付き合い方

 モチベーションが低下して読めなくなる時期、ありますよね。単に気分的な問題であれば時間とともにモチベーションが戻ってきます。しかし、頑張りすぎた後のモチベーション低下はなかなか戻りません。では、スランプとは何なのでしょうか?まずは、スランプの時期、私達の頭の中では何が起きているのかを整理して、対策を考えて見ましょう。

1.スランプによるモチベーションの低下ってどんな状態?
 スランプの状態は、モチベーションがすり減った状態です。モチベーションは感情的な要素で上がったり下がったりしています。スランプの状態では、モチベーションの上がり幅より、モチベーションの下がり幅の方が大きい状態です。モチベーションを上げるのはポジティブな要素です。たとえば好奇心・成長意欲・達成感・読書による感情の体験・知識欲は気分を上げて、モチベーションを押し上げます。一方、ネガティブな要素としては、不安・不快感・自己懲罰があります。『英語多読をしていて、本当に英語が上手くなるのか?』『難しい単語が多すぎて、辞書を引き始めちゃったけど、正直つらい』『設定した目標のところまで読めなかった。自分はダメな奴だ』って、いまこれらを読んだだけで気分が下がりましたよね?つまり、スランプとはこういうネガティブな感情の負債がたまった状態であると考えられます。

2.2つのモチベーションとスランプ
 実は、人のモチベーションには、内発的なモチベーションと外発的なモチベーションがあります。内発的なモチベーションは、『大人向けの洋書を読めたらかっこいい!』『とにかく本を読みたい!、物語に没頭するのが楽しい!』といった、報酬とかとは関係なく楽しいからやる!という、自分の内側からくるモチベーションです。内発的なモチベーションは、目標に向かう楽しさを与えてくれます。
 一方、外発的なモチベーションは『学校の課題をクリアするために、ノルマの分だけ読まなきゃ(させられ感)』『100万語を6ヵ月で読むなら、毎月17万語読まなくちゃいけないから、とにかくそのペースで読もう(難しすぎる目標)』『英語が読めたら収入が増えそうだから、嫌いだけど読まなきゃ(報酬を目当てにしたモチベーション)』『あの人はもっと速いペースで読んでるから、自分も同じペースで読まなきゃ(焦り、恐怖)』といった外部からの情報入力に基づいた行動の動機です。外発的なモチベーションは現実に合わせた目標を設定する指標にはなりますが、現状の能力や時間的余裕とのずれが激しいと、モチベーションを毎日ガリガリと削る原因になり、それが蓄積するとスランプになります。
 厄介なことに、試験などで実力を問われる機会を設けられたり、順調に英語多読を続けて目標が高くなっていくと、内発的なモチベーションが、いつの間にか少しずつ外発的なモチベーションにすり替わって減っていくことが多いです。以下に、内発的なモチベーションが外発的なモチベーションにすり替わった例を紹介します。

①『難しい本が読めた!』という達成感にのみ内発的なモチベーションが支えられているパターンです。内発的なモチベーションがこれだけだと、早い段階でより高いYLに挑戦しますが、そこではすらすら読めず、理解度も低く、知らない単語も多くなります。結果、成長できるか不安になり、快適に読めないため不快感を感じ、これではダメだと自分を罰するようになり、ネガティブの負債がたまってしまいます。こういう方は、成長を急がず、本の内容を楽しみ、時間にノルマを設けず読むのが脱出のカギになると思います。

②文法書や単語帳、英語日記帳など、次々とお勉強ノルマを増やしてしまうパターンです。よほど勉強が好きな人は別ですが、通常は覚えられない、間違えた、スラスラかけないといった要素は、モチベーションをすり減らす要素になります。また、毎日英語に費やす時間のプレッシャーも大きくなっていき、ネガティブな感情に押しつぶされてしまうケースが多いです。このパターンの場合は、完璧主義をいったん捨てて、読む聞く書く話すの四技能をバランスよく鍛えるのをやめて、まずは読むに徹することをお勧めします。やることを絞れば、かなり気持ちは楽になるはずです。

3.スランプが行き着く先は『何をやっても楽しくない(アンヘドニア)』の状態!
 厄介なことにモチベーションが低い状態が長く続くと、英語多読以外の部分にも影響を及ぼしてきます。 Tanith CareyのFeeling 'Blah'?にはアンヘドニアという、楽しみを感じられない状態について書かれています。ここでは、Feeling 'Blah'?の内容から、アンヘドニアの状態を紹介させていただきます。
 アンヘドニアは『快感消失』といわれる状態で、今まで楽しめていたものに楽しみが見いだせなくなる状態をさす言葉です。 この状態になると英語多読が楽しめないだけでなく、ご飯も、テレビも、散歩も楽しくなくなります。 この状態は、①将来に期待しなくなる、②楽しかった記憶、印象が残らなくなるの二つの要因によって引き起こされます。 例を挙げると、正常な人は、ピザのデリバリーを注文したら、ピザが届く前からドーパミンが分泌されて楽しくなってきます。でも、アンヘドニアの状態の人はまったく期待しないため、そもそもピザを注文しようとも思わなくなります。また、ピザが届いて食べて美味しかったら、正常な人はまた食べたくなるのですが、アンヘドニアの状態の人は、楽しいと感じられない、楽しい記憶が残らないことによって、ピザを再び頼む意欲がなくなってしまいます。
 アンヘドニアの原因は不安です。アンヘドニアの状態から脱出するためには、子供のころに楽しかった記憶を思い出して自分の内発的動機を考え、自分の不安の原因を時間をかけて特定していくことで脱出する糸口が見えるようになります。 からせみも、ご飯をおなかいっぱいまで食べると、しばらく英語多読ができなくなることで、自分を責め(自己懲罰感)、もっと読めるはずという強迫観念(不安)に押さえつけられていた期間があります。でも、できない英語多読のことを考えるより、ご飯がおいしかったことをよく思い出して満足し、自分が楽しんでいる今を大切にすることで、モチベーションが帰ってきました。
 モチベーションの低下には、行動活性化という分野も有効らしいです。行動活性化は認知行動療法という、考え方を修正することで心の負担を小さくする精神療法の派生型です。認知行動療法ではコップに半分、コーラが入っていたとして『もう半分しかない』『まだ半分も残っている』など、事実の受け取り方を変えてストレスをコントロールする方法です。そして行動活性化では、認知行動療法のやり方で、ひたすらポジティブになれる考えを積極的に学習することで、モチベーションを取り戻すことを目指します。すなわち、不安や自己懲罰を小さくする考え方の模範解答を積極的に学ぶことで、ストレスを軽減するという方法です。不安や自己懲罰に結び付く思考パターンを自分で見つけ出したうえで、同じことを他の英語多読仲間はどう頭の中で処理しているか聞いてみるといいのではないでしょうか?
 からせみも、スランプで悩んだ時期に、Twitterで洋書クラスタさんたちから、色々なご助言をいただいていました。先輩から受けた恩は、後輩に同じことをすることで返す義務があると考えています。なので、もし、相談相手がいない人は、LINEやXでからせみにお問い合わせいただければ、色々ご提案をさせていただきます。お気軽にメッセージをください!



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この記事の著者【からせみ】について:
 英語多読1000万語達成済み。身長の3倍の高さに相当する量の洋書を読破。最初は英語が全くダメで学生時代は勉強をサボってゲームばかりしていた経歴の持ち主だが、現在はバリバリ洋書を読みまくる英語クラスタの一員である。洋書で心理学の勉強をしており、優秀な人から英語が苦手な人まで、色んな人の悩みに寄り添えるよう日々努力しています。地元にある英語多読クラブの副代表もつとめています。

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